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zoom RSS 「伊勢物語」寸聞

<<   作成日時 : 2017/07/31 14:00   >>

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 伊勢物語、... 今まで読んだコトも無いのに何故か先般 講演を聴く機会があった。 内容は、この本が後の時代の日本文学に与えた影響に就いてであったが、出来れば逆に この本の作者が他から どの様な影響を受けたのかが知りたかった。 ... 伊勢物語自体は今もって作者は不明で、しかも書かれた年代も書き終わった時期も良く分かっていない。 確証はないものの同時代の 或いは後世の人達は、実際の執筆者は歌風や登場人物、書かれた内容から推して在原業平ではと推測している。 だが仮に作者が業平であったとしても、彼は既に 880年には亡くなっているので、その後に複数の誰かが同じ思想の下で物語を大幅に増補して完成させたと考えられている。 ... 結果、この物語が現在の形になったのは諸説あるものの 10世紀の後半頃では となっている。 なお、増補した人には子息の滋春や一族の紀貫之の名が挙がっている。

 この物語の特徴は、各段に 一首以上の和歌が入り、全 125段を通じて一貫性は無いものの大要は 一人の男の元服から死の直前までの生涯を描き上げた物語であるコト。 更に内容も、恋愛や友情から旅、政治など多岐にわたり、文学としての主張は必ずしも強くはないものの 小文と歌の組み合わせで全体を纏めている、伊勢物語とはそんな歌物語である。 従って、この歌物語は平安時代から江戸時代に至るまで、各時代を通じて読み親しまれてきた本でもある。 特に 「昔 男ありけり... 」 で始まる段は印象的で歯切れも良く、小文の間に必ず入る三十一文字は楽しくもある。 ... 平安時代の人々にとって、和歌は相手への意志の伝達手段であり 会話の手段でもあった。 自分の気持ちを相手に伝える和歌は、平安時代の頃から仮名文字で書く様に変わる。... 伊勢物語は、小文も和歌も仮名で書かれていて 内容的には誰かから伝え聞き、書き留めた小文に心情を吐露した和歌の部分を加えた構成になっている。

 「遊仙窟」 は 8世紀の唐の時代に長文成によって書かれた伝奇物語である。 この本は 記事を主文とし詩の部分を従とする構成であるが、読む程に詩の部分がかなり長い。 小文に和歌を取り込む伊勢物語の手法は、昔から遊仙窟の影響を受けたものと指摘されてきた、次の時代の大和物語も同様にこの本の影響を受けているコトは間違いない。 遊仙窟は、山上憶良ら遣唐使により本邦に持ち込まれたもので、平安時代から江戸時代にかけて上は帝から一般人に至るまで多くの人に読み継がれてきた本でもある。 ... 「遊仙窟」 の記事では、作者自身が主人公に成り替わって物語を進めているが、伊勢物語もこの手法を踏襲した。 但し、遊仙窟の方の主人公は、「わたしは... 」 と一人称で始まるが、伊勢物語では 「 昔、男ありけり.... 」 と 三人称で始まる。

 枕草子の 288 段には、「 宮仕えする人の出て集まりて、... さべき折は、一所に集まり物語し、人の詠みたりし歌、何くれと語りあわせて... 云々。」 と載る。 即ち、平安時代の中期には 宮仕えをする人達が集まれば自然に歌談義が始まり、誰それが こんな歌を詠んだよ等と皆で語り合っていた様子が描かれている。 これは凄いコトで当時の宮仕えの人達のレベルの高さが窺える。 ... さて、同様に宮仕えをしていた清少納言だが、彼女は歌を詠むコトよりも 寧ろ意の向くままに見たコト、感じたコトをそのまま小文に書き留めて、自分の意志をより文学的な言葉で伝えると云う別の道を選んだ。 ... 伊勢物語風とは異なる見事な散文詩、「枕草子」 は其処から誕生した。

 伊勢物語は本の原本は残っていないが、平安時代以降に書かれた写本や注釈書の類は実に多い。 その中で現在、出版本や教科書として使われている伊勢物語の本は、1234年に藤原定家が書写した 「天福本」 系の写本である。 実はこの系統の本も更に分岐していて数種類あるが、元の本は残ってないと云う。 これら多くの写本や注釈本は、平安時代から江戸時代の間にそれぞれ独自の展開を遂げて新たな文学作品の誕生に寄与した。 ... 能では井筒や隅田川が、人形浄瑠璃では井筒業平河内通や競伊勢物語などが その代表とされている。 また物語文学の源氏物語や歌物語の大和物語は、伊勢物語の影響を強く受けていると云われてきたが、具体例としては、源氏物語の、光源氏の 「北山と春日の里」や 「須磨下り」 の項は、研究者に依れば 伊勢物語 第一段の 「初冠... 」 の項や 懺悔男の 「東下り」 の項と構成は同じであり、源氏物語は伊勢物語の影響を強く受けていると云う。

 参考書  :
佐々木和歌子  やさしい古典案内   角川選書
張文政、今村与志雄訳   遊仙窟   岩波書店

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