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zoom RSS 日本美術 三つのキー

<<   作成日時 : 2017/09/30 17:30   >>

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 戦後、日本美術の教科書と云われた本に辻惟雄著の 「日本美術の歴史」 (2005年) がある。 この本が出る前にも同じ著者による姉妹版 「奇跡の系譜」 (1970年) と、 「奇跡の図譜」 (1989年) が出版されている。 縄文から現代までの美術工芸を網羅した 「日本美術の歴史」 は、この二著を基にして書かれたもの。 ... 日本語の 「美術」 と云う用語は、明治の初めに西洋の fine art を翻訳して出来た新しい言葉である。 それ迄の日本では絵と書はまとめて書画とされ、彫刻と云う言葉は無く、工芸は絵画と共に「工」 の概念に含まれていた。 また、縄文土器の美は純国産の美であるが、弥生時代以降の美は大陸から齎された仏教文化や、その後の西洋文化の影響を受けながら発展して来た美である。 だが、その様な条件下にあっても尚、底辺には一貫して在り続ける 「日本美」 固有の乗数なるものが有るのではないか? この点を出発点として著者が導き出したのが、@ 「かざり」 装飾文化であり、A 「あそび」 潜在的な遊び心で英語で云う play fulness 、 B 「アニミズム」 修験道の様な自然崇拝の系譜の三点であった。 本書は、この三つのキーを基に新しい視点で書かれた美術書である。

 この書に関して当時の文芸評論家の丸谷才一さんは、「縄文からアニメまで」 の一文で...、この本は例外的と云っていいくらい良く出来ていると絶賛。 しかも著者本人も云っているコトとして...、かざり ⇒ 装飾性、あそび ⇒ 遊戯性、 アニミズム ⇒ 自然崇拝的呪術性 の三つの柱を軸に構想された本書は、従来とかく軽視されてきた画家たちにも光を与えたと。 その彼等とは、岩佐又兵衛であり、伊藤若冲、曽我蕭白 (しょうはく)等で、どちらかと云えば異端奇想と見られてきた画家達である。 本書は、視点を変えれば 未だまだ新たな芸術作品が陽の目を見るコトをも教えてくれたとも述べている。 通史は通常、専門分野の人が集まって共著形式で書かれるものであるが、これだけの幅広い通史を一人で纏め上げてくれたコトは、読者にとって有難い事と述べている。

 また、フランス文学者の中条省平さんは、辻氏の書いた 「日本美術の歴史」 では @ かざり、A あそび、B アニミズム がキーになっている としながら、日本美術は縄文の美術を除き、弥生時代以降は東アジア文化圏の影響を常に受けながら変化を遂げてきた。 日本に仏教が伝来すると仏教美術の渦に巻き込まれるが、そうかと云って色褪せた仏像を分析するだけでは美術の全体像は掴めない。 奈良から平安、鎌倉の時代は仏教美術の全盛時代であり、続く室町、安土桃山から江戸時代に掛けては 「かざり」 の美術の全盛時代であった、...だとすれば その接点は何だったのかを探る必要があるのではと? ...本書は、歴史書として首尾一貫性を保ちながら日本美術の無限の多様性を多数のカラー版に委ねているものの、やはり現在望みうる最良の日本美術の教科書と述べている。

 日本美術は、当然ながら国内で制作された作品でなければならない。 所が 昨今では日本人が国外で制作したもの、更には外国人が日本国内で制作したもの、外国人と共同で制作したもの等があり、従来の考え方では全体を掌握出来なくなっている。 それに美術の内容、即ち ジャンルの面でも 絵画、彫刻、陶磁、金細工、漆塗り、写真、刀剣武具、庭園、建造物など...、多岐にわたっている。 従って美術の範囲は広く、それ故に美術と美術でない物との境界も甚だ曖昧になりつつある。 また国内では美術であっても外国から見れば美術でないものも有ろう。 今後は美術史、或いは美術館、美術論、美術家などを論ずるに当たっては取り上げ方も変わろうというもの。

 日本では縄文時代は別として、平安時代には国風文化が強調され部分的には日本美術が独自に展開したコトもあった。 しかし、日本の美術は大局的には弥生時代以降は大陸文化、仏教文化の影響を受け、江戸時代には長崎経由で西洋文化の影響を受けながら独自の発展を遂げて来た。 明治時代には絵画等では尚も西洋の技法が習得され続けた結果、逆に古来への伝統志向から日本画が生まれると云うメリットもあった。 また浮世絵の技法が西洋で注目されたりして美術界は複雑な経緯を辿った。 しかし基本的に日本発の美術品は量的には決して多くはない。 諸外国の美術館に於いても日本美術のコーナーは設けられているものの未だに規模は小さいまま、 これが日本美術の現状である。

 参考書 :
辻惟雄    日本美術の歴史    東京大学出版会
丸谷才一   縄文からアニメまで   東京大学出版会
中条省平   所の評論copy 2006.2.12.

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