カルデラ噴火?

 山歩きの先輩から正月休みに読んでみてはと薦められた本があった。 石黒耀著 「死都日本」である。 しかし死という文字が気になり縁起を担いで、その年の正月には読まなかった(笑い)。

 だが 年が明けたら街の書店では既に品切れ、購入できなかった。 ...そして後日、出版元の K社がこの本に関連して、大規模カルデラ噴火についてのシンポジュウムの開催を発表した。 企画したのは当時の若手の火山学者たちだった。 記憶では、この小説は火山学的に見ても科学性があり且つ、巨大災害の仮想体験にも役立つと云う趣旨だった様に思う。 シンポ...では約 6 時間に亘り火山学者や内閣府、気象庁の防災担当者、防災専門家ら20人による講演やパネルデスカッションが行われた。 主催者側は参加者数を当初200人と想定したのに 希望者が多く席を500に増やしたと聞く。画像

 カルデラとは火山性の凹地で日本では直径が 2km以上のものを云う。 当然ながら、凹地の径は噴火口の径よりも大きい、それは大規模火砕噴火の跡だからである。 日本でも屈斜路や阿蘇のカルデラの直径は20km超、東京の山手線よりも大きい。 カルデラの火砕噴火の原因は、地下に溜まったマグマが発泡して急激に体積を膨張させ、地表に勢いよく噴き出すメカニズムにある。 近年、複数の要注意の活火山を中心に ハザードマップが作成されているが、本当に怖いのは寧ろ 未だに予知体制も世間の関心もなく、しかも規模が桁違いに大きな 「大規模カルデラ噴火」の方であろう。

 カルデラ噴火は、普通の火山噴火に比べて その規模や破壊力は極めて大きいが、反面 その頻度は低く 発生回数も少ない。 しかし、過去の巨大噴火の痕跡は今も我々の周囲に数多く残されている。 例えば過去、九州で発生したカルデラ噴火の降灰は 近畿、関東東北にまで及んでおり、阿蘇の場合には 北海道東部 (降灰10cm)に迄及んでいる。 今もし、この規模のカルデラ噴火が日本で起きた場合、火砕流と降灰で焦土と化す カルデラ口から半径100km 以内の我々の生活圏は壊滅、埋もれた森林の回復には 500年の歳月を要しよう。 まさに国家存亡の危機に陥る。 (中朝国境の白頭山や縄文期の南九州では大噴火後、植生の回復に500年を要した)

 鬼界カルデラ噴火の例では、発生は縄文中期の 6200年前、場所は鹿児島湾の南方、薩摩硫黄島沖の浅海底で、カルデラの径は 20km。 噴火は降灰 (アカホヤ火山灰)、火砕流、大地震、津波を伴い、中でも降灰は宮崎で1m、豊後竹田 50cm、大阪10cm、仙台若干であった。 町田洋氏は鬼界大噴火による降灰量を 100k㎥ と推定している。 この時の火砕流は100km もの海上を北上したあと上陸、大隈半島をなめ尽くしている。 また、 宮崎県の尾花A遺跡の例では、このアカホヤ火山灰層を挟んで下位に縄文早期の貝殻文系土器が、上位には系統の異なる縄文前期の轟、曽畑土器が出土している。 その為、九州南部では噴火前後の縄文文化に断絶があった可能性も示唆されている。 土壌学の方でも このアカホヤ火山灰層は堅くて植物の根を通し難く嫌われ者の地層である。

 次の姶良(アイラ)カルデラの場合は、発生は 2万2千年前で過去日本最大の噴火と云われる。 噴火地点は鹿児島湾北部から霧島南部、噴火は主に軽石降下、火砕流、火山灰等で降灰量は150k㎥、範囲は400万k㎡ と推定されている。 降灰範囲はほぼ全国で大阪 30cm、関東で 10cm の降灰が記録されている。 先年、箱根の明神岳へ向う尾根筋下でも圧縮された 10mm幅の赤白っぽい AT火山灰層を観察した。 他に丹沢、横浜、房総などでも降灰が確認されている。 日本列島の広い範囲に降ったこの AT火山灰の層は、年代を特定する鍵層として地質学や考古学で広く利用されている。 (町田洋氏による、AT ⇒ 姶良Tn火山灰の略称)

 「死都日本」 のモデルとなった加久藤カルデラは、30万年前に活動した大規模カルデラ (現、加久藤盆地)だが、現在は南面を霧島火山群に覆われていて 既にその全貌を窺う事は出来ない。 当日の講演の中で九州南部における将来のカルデラ噴火の危険性、空白地帯の指摘もあった。 予知を行うには先ずは噴火の原因となるマグマの蓄積過程や構造の解明が必要である。 更に、現在の重力測定法以外の予知手法の開発も急務であろう。 また、過去にカルデラ噴火のあった地域 (北海道、東北も含めて) では一定の時間経過後の再発確率も大きいと云う。 ...「死都日本」は現代人が有史以来、未だ経験した事のない巨大カルデラ火砕噴火の恐怖を警告してくれた。

 参考書 :
死都日本シンポジュウムテキスト/
          講談社K作戦実行言委員会 03.5.25.
町田 洋   火山灰は語る         蒼樹書房

写 真: 支笏湖、日本で2番目に大きいカルデラ湖。
      (北海道 しこつ湖、後方は恵庭岳)

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