多神教と一神教

 旧暦の10月は神無月。 ..神無月⇒ .諸説ある中で ”新穀を使い酒を醸す醸成月 (かみなしづき)” と云う解釈が最も美しい。 ...他に、八百万の神が皆 出雲に出かけてしまい此方側が空っぽになるので 神無しとする説も有る。

 少し前の時代までは、年末の28日には正月の飾り餅を 床の間や玄関、炊事場、井戸、便所などに供えていた。 家の中には、夫々の役割を持つ護神が居て疫病や厄害から一家を守って下さるからと聞かされていた、これが多神教の基本である。 ...山川草木、路傍の石から風景、天体に至るまで悠久の自然を ”依り代”と見做し、夫々に神が宿ると考えたのは農耕民族の自然信仰だったが、これは多神教である。 BC1500~500 年頃に ヨーロッパを席巻したケルト (人)も当初は自然信仰の民族だったが、後にキリスト教に帰依して一神教へ転向した。 ...一神教の キリスト教、仏教、イスラム教は何れも自然崇拝を忌避する。 今では 先進国で多神教を奉ずる国は日本だけになった...、此の侭では、宗教文化の正倉院になってしまう。 ...子供の頃は、戦争に負けたのに家の中には何でこんなに沢山の守護神が居るのかな、と思っていた。

 1945年 (S20年)まで日本の植民地だった朝鮮半島や台湾、満州、樺太には、神宮・神社が沢山建っていた。 だが、それ等は敗戦と共に総べて現地人によって打ち壊され破却された。 ...それから何十年かを経た或る日、旧植民地だった某国のビジネスマン達と雑談した中で 当時の外地の神社の話が出た。 彼等曰く、大勢の日本人が来て一生懸命拝んでいたので神社の建物の中には、さぞ大切な貴重品が置かれているものと思っていた。 やがて戦争が終り 日本人が居なくなったので、建物を打ち壊して中を見たら小さな鏡や岩石、化石 (サメの歯)等が出てきたので驚いたと云う、こちらも初めて中身を聞き愕然とした。 日本人は何故 あの様なものを一生懸命拝んでいたのかと問われ返答に窮した。 ...さりとて、神道の神が宿る ”依り代 (よりしろ)”や ”御柱”など私が説明し、擁護する必要もないので放っておいた。 外国の人達も最後まで意味が分からなかった様だ。

 文明の段階が ”新石器時代”だった頃は、世界中の多くの民族は自然界の太陽を信仰していた。 日本の天照大神信仰も 英国のストーンヘンジ (環状列石) も太陽信仰に纏わるもので、日本人が 「初日の出」を有り難がるのは その名残りである。 2万年前に氷河期が去り、海水面が徐々に上昇して来て地球が暖かくなり始めた頃、暖かさを齎す太陽への信仰が始まった。 それは人類が、発祥地のアフリカ東部を離れて北半球各地へと散らばり、移動と定住を繰り返し始めた時期と重なる。 農耕を始めた人類にとって太陽は恵みの源泉であり、ごく自然に信仰の対象となったのは明らかである。 ...新石器時代という時代区分は、日本の考古学では使わないが内容は農耕を伴う石器文明時代の総称であり、青銅器や鉄器を使う以前の時代を指す。 ...日本式に云えば、縄文の中期から弥生の極く初期の頃?...であろうか...。

 ユダヤ教は小型ながら堅固な一神教の宗教だが、古代イスラエルの民族は部族ごとに アブラハムやイサク、ヤコブ等の固有の神を信奉していた。 だが、有名な苦難のエジプト脱出を機に沢山あった神々は淘汰され、唯一の絶対神エホバの神だけが民族の守護神として残った、以来ユダヤの神はエホバに決まるが、欠点は自分達の民族の為だけの神であるコトだ。 一方、多神教だった古代ギリシャの場合は、...こちらは大勢の神々で溢れんばかり...、彼等は夫々に人間的な役割を担っていて、商業、音楽、戦さ、美と愛の神...等々と、人々の身近に居て喜怒哀楽に満ちた神々だった。 ...だが、同じ多神教でありながら 日本の自然界の神々とは全く性格が異なるのは興味深い。 ...時代や地域により、神々の数や内容は夫々に大きく異なっている、それは自分たちが何を欲っするかに依り、都合の良い神を選んで来たからに他ならない。

 総じて多神教は、人間界の身近な自然や英雄が神格化されたもので極めて静的である。 だが一神教の方は、キリストや釈迦、マホメッド など何れも教祖本人が過去に実在していて、見方によっては往時の現人神 (あらひとがみ)信仰の延長と云えないコトもない。 これらの一神教は、時には宗旨を改めながら拡張を続け 巨大な宗教集団へと発展した。 その結果、各宗教は夫々の神をして、他の神を一切認めない全能で唯一の絶対神にまで昇華させてしまった。... だが彼等の唱える絶対精神の具現は、裏を返せば霊的な利己主義にも堕ちかねない。 彼等は正義面 (づら)をした利己主義を掲げ、互いに他の存在を認めることなく宗教を楯に相手を征服してきた。 ...果てしなく続く宗教的対立は、終える術を知らない。

 参考書 :
森和朗  一神教と略奪主義  学士会会報 第844号。

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