行事・風習と道教

 年が明ければ新年、...先ずは元旦の屠蘇 (とそ) にはじまり、初詣の おふだ、おみくじ、護符etc...、更には七草粥、トンド焼き、節分の豆まき (元は大晦日の宮廷行事) と行事が続く、...これらは日本古来の厳粛な新年の行事の筈だが、実は全て古代中国から伝わった、しかも道教由来の風習である。 ...他にも年中行事の、桃の節句や端午の節句、七夕祭り、七五三の祝いゴト...、夏の中元贈りや 大安・仏滅の六曜暦から厄除けに至るまで、何れも道教の影響を受けて日本に定着した風俗・風習である。

 奈良の飛鳥にある亀石・酒船石・猿石...etc、これらの石像の由来は日本史的発想では中々解けない、だが道教の知識を駆使すれば解けるから不思議だ。 ...我国では第 27代の斉明天皇が、道教由来の石造物を並べて広大な庭園を造ったり、不老不死の仙人の住む天宮を吉野の多武峰に建てたり、吉野の山に離宮を造営したりして道教の神々を祀っていた。 ...唐では、末期の武宗の時代に外来の宗教を排斥して道教を保護したが、もともと道教は現世利益という固有の生活信条と民間信仰を基盤とする宗教であり、2000年の昔から中国民衆と共にあった風習と信仰が結集したもの。 ... 従って、道教は初期の頃は 教祖も教典も持たない自然態の宗教だったが、時代が下がるにつれて老子の思想や陰陽五行説、神仙思想などを 次々と取り込んで大きくなった、その結果 いろいろな神々を包含する大宗教へと発展したのである。

 儒教が古代中国の知識階級を対象にした道徳・規範の教えだったとすれば、道教は庶民の生活に根付き日々の幸せを大切にする現世利益の教えだった。 ...自らの名前を 「道教」 と決めて教理や教典を作り、既存の宗教の仲間入りを果たしたのは 5世紀の後半のコト。 教典名は、正統道蔵と云い約 5400巻から成る大著だが、目先の現世利益を願う庶民たちが この教本を読むコトは先ず無い。 ...魯迅は 「道教が解かれば 中国が分かる」 と書いたが、空飛ぶ仙人や不老不死を願う道教の懐の大きさには感じ入らざるを得ない。... 日本の道教は、弥生時代から平安時代に掛けて、日本列島にやってきた大陸からの移民たちが断続的に、或いは断片的に持ち込んだ生活習慣で、これらが次第に既存の仏教や神道とも混じり合い日本独特の新しい習俗を形成していった。 ...過去に、道教の系統的思想が日本に上陸した形跡は無い。

 道教の厄除けの一つに石敢當 (いしがんとう) 建立の風習が有った。 石敢當とは鬼を追い払う魔よけの石柱のコト。 当初は中国の福建省辺りの風俗だったものが、唐の時代の 8世紀頃から周辺に広がり始め、15世紀迄には台湾や東南アジア、沖縄、日本の本州へと伝播して定着した。 ...埼玉県騎西町上埼の龍興寺の構堀の山門脇に立つ石敢當は、現在は町指定の有形民俗文化財で、高さは 70㎝で柱の横に 1771年 (明和8年) 晩春との彫がある。 或る調べでは古い石敢當の分布は全国の 29都道府県に及んでおり、埼玉県内には 2基しかなく他は加須市の千方神社で 1817年建立のものである。 その点でも龍興寺の石敢當は東日本では珍しい古い塔である。 ...研究者の坂出さんは、石敢當を前にして 台湾では線香が供えられるが、沖縄では手を合わせる姿もない、さて本州では如何であろうかと書いている。

 中国本土では既に廃れているのに日本で重用されているのが、暦の中に伝わる六曜説である。 ...老若男女を問わず今の日本人が秘かに気にする六曜説は、先勝に始まり友引・先負け・仏滅・大安・赤口と繰り返すのが (一部の例外を除き)、基本ルールである。 13世紀の南宋の時代に起こり、元・明 の時代に流行して、現在では台湾や香港にその痕跡を残すのみで中国にも無い 六曜暦だが、どう云う訳か日本では特に昭和の戦後から盛んに使われる様になった。 葬儀社や結婚式場の都合なのかもしれないが、現代科学を学んだ若者ですら個人的には仏滅や友引を忌み嫌う様を見るにつけ、道教の遺した影響力の凄ましさに舌を巻かざるを得ない。

 華僑が海外へ進出する時には必ず自分たちの守護神を携行し、新しい土地に廟を造りその周囲に町作りをする。 ...そこで祀られるのは、殆どが媽祖像か関帝廟である。 長崎や横浜の中華街も例外ではない。 関とは三国志演義に出てくる武将の関羽 (かんう) だが、宋の時代に山西省の塩の商人たちが 「義」 の神として祀って以来、商業の神として定着する様になった。 媽祖は航海の神である。 ...何れも今なお続く道教の神々の海外進出である。

 参考書 :

龍興寺          さきたま文庫  #40
京都・呪術のみやこ  JR東海生涯学習財団
坂出祥伸  日本と道教文化    角川選書

 


















































































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